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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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終わっちまったぜー……
ピンドラ終わってしまいましたね。しょぼーん。

そんなこんなでパロディです。といっても一次のを書き直しただけですが。
冠葉と晶馬は別々の高校に通っています。冠葉は共学の私立校、晶馬は共学の県立高。
で、冠葉がシスコンでブラコンです。妹と弟が可愛くて可愛くてしゃーない。

そんな設定でよろしければどうぞ。

 帰宅後、しばらく部屋に閉じこもって宿題をやっていたのだが、四番目の問題で和英辞書が必要になった。だが、いつも置いてある場所に何故か無く、あったのはケースだけ。中にはお菓子がいっぱい詰まっていた。きっと辞書を無断で借りたことの詫びだろうが、あまりにもぎゅうぎゅうに詰められていたので取るのが大変だった。取り出してみて驚いたのだが、入っていたお菓子は値段がなかなかのものばかりで、こんなことに金をかけるなと少し怒る。
 この犯人が誰なのかはわかっている。双子の兄貴だ。何故あんなに頭のいい彼が和英辞書なんかを欲したのかは知らないが、こうして僕に嫌われまいと必死になっているのが証拠だ。
 所謂兄貴は自他共に認めるブラコンでありシスコンなのである。それも極度の。
 僕や妹の陽毬と同じ空間にいたがり、その時は必ずくっついてくる。流石にこの年になって陽毬に抱きついてくのは止めたが、代わりにその分僕に抱きついてくるようになった。門限を少しでも過ぎればバイクを飛ばして僕を探す。風呂へは同性である僕の時には平気で入ってくるし、一緒に寝ようとさえしてくる。僕が起きているうちは静かに自室にいるのだが、朝目覚めたら隣で当たり前のように寝ているのだ。最初は拒んでいたが、次第にそれさえ面倒くさくなって、今では黙認している。別に汗臭いわけじゃないし、見ていて悪い寝顔でもない。何よりその時の兄貴の幸せそうな顔と言ったら。
 兄貴は父に似て容姿端麗なのだ。殴って整形してやりたくなるくらいに。

 さて、とにかく今は和英辞書だ。返してもらわないことには宿題が出来ない。やらなければいいのだが、明日は僕の出席番号の日にちだから当てられるのは確実だ。やらねばならない状況におかれている。

 兄貴の部屋は中に誰もいなければ基本的に開いている。いつでも入っていいことの表れらしい。
 真っ暗な部屋の前を通りすぎ、階段を降りる。すると、リビングの方がやけにざわついていた。テレビの音ではない。明らかに数名の人の声である。この時間、両親は帰ってくるわけがなく、彼と僕しかいないはず。陽毬は友達と放課後デートだ。
 この騒々しさは何だ。恐る恐るリビングのガラス戸を覗きこんで、唸った。
 数名の見知らぬ男女が笑っていた。皆兄貴の学校の制服を着ているから、友達なのだろう。そこには勿論彼もいるのだが、何だか笑っていると言うより面倒くせぇと言わんばかりの顔をしている。というか、男達は兄貴と似たような表情をしていた。つまり見せ掛けの笑みだ。比べて女子達は心から楽しそうに笑っている。ほんのりと頬が赤いのはチークだけのせいではないだろう。見れば男は皆かなりのイケメンだ。殴ってやりたいぐらいに。そして彼女達もかなりの美人だ。陽毬には負けるが。
 彼女達から見ればこれは合コンなのかもしれない。しかし、机の上に置いてあるノートやら文具やらは何だ。まさか、勉強会か。勉強会という名の合コンか。だったら兄貴が和英辞書を持っていったのにも頷ける。だが、それは使われていないらしく、彼の手にしっかりと掴まれていた。使わないなら返してもらっても問題はないだろう。
 どうせ「似てないね」と思われたり言われたりすることはわかっている。たまに喧嘩を売ってくる女子もいるが、今回はどうか。予想ではどっちつかずのタイプだ。まあ、兄貴がいればそれほどのことは言わないだろう。

「兄貴、ちょっと」

 扉を開くと一斉に見られた。そして僕を見た瞬間、兄貴の顔が蕩けるような笑顔になったのを見た。それに気づいたらしい彼の隣の男子はぎょっとしている。

「何だ?ようやくお帰りのキスか?」
「誰がそんなのやるもんか。僕は宿題をやってるんだ、それどころじゃない」
「宿題?そんなもん俺が教えてやる」
「それじゃ意味がないだろ。それに兄貴のは教えるじゃなくてやってやるって言うんだ。全然違うよ」
「当たり前だ。お前の頭がよくなったら、遠くに勤めるようになって家から離れていくかもしれない。そんなの許せるか」

 なるわけないだろ。それでも言ったところで聞き入れやしないことくらい分かっている。溜め息を吐きつつ兄貴の元に歩み寄る。

「ほら、辞書」
「駄目だ。それに、兄貴じゃなくてお兄ちゃんもしくはマイラバーだろ」
「前者はともかく後者は却下。ほら、兄貴、とっとと辞書返して」
「拒否する」

 そう言って、辞書を後ろに隠してしまった。くそ。
 とにかく早くここから帰らせてほしい。いい加減彼女達の鋭利な視線と、彼らの好奇の視線に耐えきれない。弟が苦しんでいるのに気づかないのだろうか。このば冠葉。

「もういいよ。パソコンを使うから」
「だが断る」

 最初からそうすればよかった。パソコンで翻訳サイトと和英辞典を探せば早い話だ。そう思って、パソコンのある両親の寝室に向かおうとすると、兄貴がいきなり腕を引っ張ってきて彼の膝の上に座ってしまった。どうしてこうなった。

「離せ!」
「離したら離れるだろうが」
「何わけわからないこと言ってるんだよ、さっさと勉強会再開しろ!」

 必死に体を捻って離れようとしているのにびくともしない。力の差がここまで明確だと憎い。足を踏んで腕をつねっているのに。兄貴はいつからマゾになったのか。
 しかし、僕の発した勉強会の言葉で、今まで何も言ってこなかった彼女たちがはっとしたようにシャーペンを取る。

「そ、そうだよ冠葉君!勉強しようよ、ね。教えて?」

 よし、よく言った。首をかしげて上目遣いはなかなかの動作で、ああ可愛いなって思う。クラスメイトには女みたいな顔と言われようが、自分はれっきとした男なのだ。今まで兄貴が連れ込んだ人は大体が「ねえ、冠葉君。その子だあれ?え、これが噂の弟さん?似てないね」と言って兄貴の反感を買い、家から追い出される運命にあった。似てないのは当然なので仕方ないことだが、彼は僕を「これ」呼ばわりされるのが嫌いらしい。よく分からない。
 ともかく、これで兄貴の意識が逸れている間に抜け出そうと、腹の部分で交差された腕を左右に引っ張り外させようと、した。しかし、動かなかった。

「どこが出来ないんだよ。さっきから見てるけど、出来てるだろ。それにさっきからダベってばっか。お前らやる気あんのかよ」

 不機嫌な声。分かりたくはないが、恐らく兄貴が怒っているのは僕との会話を遮られたからだろう。子供か。

「や、出来てないよ!私、冠葉君みたいに英語得意じゃないから!」
「そうだよ!それに、別に話してるのはちょっと緊張してるからだよ、ごめんね!」

 凄い言い訳だ。緊張してるから話すって何だよ。テンションが高くなっちゃって、ってことだろうか。
 しかし兄貴がそれをまともに聞くはずがない。眉を思いっきり顰めていた。

「得意じゃなければ出来ないってことにはならないだろ。本当に出来てないっていうのは、二百点満点のテストを百十点しかとれなかった奴のことを言うんだよ」
「え!?何でそれ知ってんだよ!さては開けただろ、また勝手に人の引き出しの鍵開けたな!?こないだ鍵変えたばっかなのに!」

 分からないようにバレないように、わざわざ鍵つきの引き出しの奥底に突っ込んだというのに。
 昔からそうだ、兄貴は僕の引き出しを勝手に開ける。鍵がついているのは合鍵を作って開ける。それで鍵を変えてもまた合鍵を作って開ける。プライバシーもあったもんじゃない。
 百十点って。兄貴以外の視線が哀れんでいるのを感じる。兄貴は兄貴で「馬鹿な子ほど可愛いんだ、晶馬はやっぱり可愛い」と変なことを言って頭を撫でて頬をすり寄せてきた。屈辱だ。というか、冠葉が行く私立の学校が頭の良い高校なだけであって、僕の通う県立高ではこれくらいが平均なのだ。だから別に馬鹿なわけじゃない。
 あまりの屈辱に、僕はとうとうキレた。

「……兄貴。いい加減にしないと磨り潰すよ」

 敢えて何処を、とは言わない。分かる奴に分かればいいのだ。
 分かるべき奴、兄貴がぴたりと、動きを止めた。

「……俺は…俺はどうすりゃいいんだ」

 本気で離そうか離さないか迷っているらしい。ここは普通なら体裁を気にして離すべきだろうが、兄貴は普通じゃないから仕方ない。そんな彼の様子に溜め息をついて、一発。

「えいっ」
「ぐっ」

 とりあえず鳩尾らへんにいれてやった。油断大敵。緩まった腕から抜け出て、さっと兄貴の後ろから辞書を取り出し扉へ向かう。そして振り返って一言。

「それでは皆さん、ごゆっくり」

 言ってそのままリビングを後にした。しばらくして後ろからキャーキャーという叫び声と、ギャハハハという笑い声があがっていたが、すぐに怒声がして静かになった。どうやら彼女達が地雷を踏んだらしい。御愁傷様。

 その後、兄貴の機嫌を直してくれと、兄の友達らしき男がやってくるまで、僕は英語と戦っていた。

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