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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
プロフィール
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うめ
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性別:
女性
自己紹介:
どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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冠葉サンド。高倉冠葉と夏芽冠葉が双子設定です。
をんさんとの合同本で書こうとして途中で放棄したものを短編で書き上げたものです。
二人とも晶馬のことが大好きですよ!
そんなパロでもよろしければどうぞ。

 僕と冠葉は実の双子ではない。よく似ていない双子だと言われるが、実際血は繋がっていないから似ていないのは当然だ。でも、もし血が繋がった本当の兄弟で双子だったら、こうなっていたのだろうか。
「おい……いい加減家に来るのはやめろ」
「別に良いだろ。俺は晶馬に会いに来てるんだ」
「尚のこと帰れ!散れ!」
 未だ玄関にすら入れていないお客様の夏芽冠葉君と、僕と彼の間に仁王立ちする高倉冠葉は実の双子である。
二人の顔は本当にそっくりで、声も似ている。背の高さも足のサイズまで同じなのだ。まるで鏡を見ているようで腹が立つとそれぞれが言っているのを聞いたことがあるが、僕や陽毬は一発でどちらが兄貴で夏芽君か分かる。全くの別人だと胸を張ってはっきりと言えるくらいだ。
そんな二人が先程からずっと、玄関先でずっと睨み合っている。
 数分前。戸を叩く音がして誰だろうと迎えてみると、そこには笑みを讃えた夏芽君がいた。いつも通り、彼の妹である真砂子さんと同じ高校の制服をしっかりと着こなしている。きっと兄貴が着たら似合わないのだろうな、と思いながら「いらっしゃい」と告げると、彼は「電話したんだけど出なかったから」と言い、謝る僕の手を取りその甲に唇を近付けた。出会った当初は驚いていたその挨拶も、もう何度もされたため慣れてしまっていた。それに帰国子女なのだと言われれば、何となく納得してしまうものだ。しかし、それが触れる直前で、後ろから空いた方の手を引かれて彼から離された。言わずもがな、兄貴である。兄貴は僕と彼の間に滑り込むようにして割り込み、それからずっとこのままだ。
「兄貴、そろそろ夏芽君を中に入れてあげようよ」
「嫌だね。つーかお前も何平然とキスされかけてんだよ」
「俺と晶馬の仲にいちゃもんつけんな。男の嫉妬は醜いぜ?」
「……あぁ?」
 ああ、また振り出しに戻ってしまったようだ。仕方がない。溜息を零し、居間に向かう。そしてその向こうにある陽毬の部屋に入り、彼女が一昨日作ってくれたモノを丁重に持ち出し兄貴の腰に向かって大きく振りかぶった。
「いい加減にしろ!」
 パァンッ、とハリセンが直撃し、兄貴が膝をつく。流石陽毬。一撃必殺と書かれたその文字は偽りではなかった。
「晶馬、騙されるな!そいつは獣だぞ!」
「はいはい。夏芽君はお客様なんだからね!」
「俺はいつも君を家族にしたいと思ってるよ」
「はいはい。冗談はいいから早く上がって」
 まったく、二人してよく分からないことを言う。ハリセンを横に置き、未だ言い争いを続ける二人を放置して、お茶の準備を始めた。以前、夏芽君が持ってきてくれた紅茶を淹れよう。一体いくらするのか分からないが、見た目から高いということは分かる。漂う上品な香りに心を安らげていると、首に温かいものが触れた。
「キッチンに立つ晶馬はいつ見ても可愛いな」
「……僕、男なんだけど」
 ふわりと香る香水が全身を包む。後ろを見ずともこの腕の主が夏芽君だということが分かった。香水もそうだが、兄貴がこうして抱きついてくる時は首ではなく腰に腕を巻き付けてくるからだ。
「晶馬、そろそろ夏芽を名乗らないか?あいつよりも幸せにすると約束しよう」
 彼は必ずこう言って僕をからかってくる。最初のうちは鼓動も速まり慌てたものだが、今は全くそれはない。この冗談には慣れてしまった。
 それに、そろそろ。
「言っておくが本気だぞ。俺と結婚を前提に付き合っ、」
 スパーンという音が響き渡った。振り返れば予想通り、兄貴が陽毬特製ハリセンで夏芽君を叩いている。
「何をするんだ、やめろ愚兄!」
「黙れ愚弟!晶馬は俺のだ誰がやるか!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた兄貴と夏芽君を見ながらつくづく思う。
 僕を利用するの、いい加減やめてくれないかなぁ。
 二人とも、本当は会えて嬉しいくせに。僕をネタにして会いに来たり、からかったり、触れ合ったり。そんな面倒なことをせず、素直に喜べばいいのだ。
「晶馬!」
「晶馬!」
「……もう、仕方ないな」
 そうしていつも通り、二人の間に割って入れば、両側からぎゅうと抱きつかれる。ああ、今日も平和だ。

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