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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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女性
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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お久しぶりです。今回もまた色物です。
以前こんなことを呟きました。

晶馬が日記を片手に二人の前に現れてさ、「皆の罪は僕が償う。そもそもこれは全て、僕が受けるべき罰だったんだ。だから、二人は幸せになって」って笑いながら燃えたら泣く。それでさ、未来で晶馬そっくりな子が孤児院にいて二人で大事に育てるとか、そういうのでもいいと思うんだ。母として父としてでなく、兄妹としてさ。二人は仮面夫婦とか、あ、これ昔の多蕗と百合パターンですね。つまりそんな感じ。どこへ転がっても冠晶陽は不滅である。

これが形になりました。ので、微妙に冠陽のような感じがしますが仮面夫婦と言うか、恋はありません。結婚してますがやはりそこに恋はなry
それでよろしい方はれっつ冠晶陽。タイトルはDECO*27さんの曲名をお借りしました。

 あの日、晶馬は俺たちを救うために火を纏った。

「どうか、幸せに」

 俺たちの制止の声など無視して笑うと、あいつは灰すら残さず消えていった。何も残さないつもりだったのだろう。そのまま消えようとしたのだ。
 だが、どういうわけか記憶だけはなくならなかった。写真からあいつが消えても、あいつの声も瞳の色も、味噌汁の味も全てを覚えていた。
 運命の乗換えを成功させたというのに、俺は未だあいつのことを忘れていない。これはきっと、道を踏み外してしまった俺に課せられた罰なのだ。
 そう思っていたのだが、違うということに気付いたのは陽毬もまた記憶を失っていないことを知ってからだった。
 夏芽冠葉として生きていた俺を訪れた彼女は、開口一番にこう言った。

「覚えてるよ、全部」

 それから俺たちのはじまりからさいごまでを淡々と口にし、泣いた。
 そこでようやく気付いたのだ。
 俺たちの罰は、晶馬というかけがえのない存在を失ったことなのだと。
 記憶があるだけマシだ。記憶のないままこの喪失感を味わってみろ。弱い俺は晶馬が救ってくれたこの世界から何度も何度も消えようとしたことだろう。それだけは決してしてはならない。俺はあいつに救われた者なのだから。
 そして、俺と陽毬は結婚した。
 と言っても、そこに恋はない。愛はあるが、それは決して恋から生まれたものではない。
 大切な女と同じ屋根の下で暮らす。二人きりだ。邪魔するものは何もない。と、昔の俺ならこの境遇を喜んだだろうか。そう自分に問う度に否定する。
 そうしたところで陽毬も俺も笑わない。だってそこにはあいつがいないのだ。もしかしたら、最初の数日間は喜びに浸るかもしれない。しかし、俺がこの手を伸ばし、選んだあいつが、晶馬が、手を伸ばしても触れられない場所にいる。その事実を自覚した時、その喜びは霧散するだろう。
 今がそうだ。俺たちが共に在るのは単なる傷の舐め合いだ。夏芽冠葉ではなく、高倉冠葉として高倉陽毬と共に存在するため。そうすることで俺たちは死ぬまで晶馬の家族で在れると信じ、ただそれだけのために俺たちは一緒にいる。

「冠ちゃん。明日は雨なんだって。折角の桜散っちゃうね」

 天気予報を見ながら陽毬は言った。今日は仕事がどちらも休みで、久しぶりに二人揃っての朝食だ。
 ちなみに陽毬は保育士をし、俺は夏芽の子会社を一つ任されている。

「そうだな」
「ねぇ、折角だからお花見しようよ」
「折角の休みなのにか?」
「いいでしょ。それにたまには歩かないと運動不足になるよ?今日は車禁止!」
「……はいはい」

 陽毬は昔より口うるさくなった。そうでもしないと俺が動かないと分かっているのだ。
 残しておいた卵スープを一気に飲み干した。食事には味噌汁と、ロールキャベツだけは絶対に出さない。それが暗黙の了解だ。



「わぁ!凄いよ冠ちゃん、満開だよ!」
「……ああ、凄いな」

 辿り着いたのは小さな公園だった。途中に大きな公園があるため、てっきりそこへ行くものだとばかり思っていたのだが、他にいいところを見つけたのだと言って、陽毬は俺の手を引きそこを後にした。
 確かに、いいところだ。遊具はブランコとジャングルジムがあるだけの質素なものだが、植えてある桜の見事なこと。恐らくあの公園よりも前に作られた場所なのだろう。あそこにある桜とは比べ物にならないくらいに大きく、高い。
 近くにあったベンチに座り、空を見上げた。花弁が舞い、青空を飛ぶ。花を愛でるような性格ではないが、今回ばかりは陽毬に免じてそうすることにしよう。隣に座る陽毬も楽しそうだ。その顔が見られただけでも来てよかったと思う。
 しばらくそうしていると、少し遠くから足音が聞こえてきた。方向からしてこの公園に向かっているらしい。パタパタと駆けてくる音は一つ。その軽さから子どものものだろうと推測した。全く、あの組織にいたせいでこんな特技を持ってしまった。
 生憎と子どもは好きじゃない。立ち上がると、陽毬が俺を見上げ、首を傾げた。

「子どもが来る。帰るぞ」
「えー!」
「えー、じゃない。俺が子ども苦手なのは知ってるだろ?」
「……むー」

 頬を膨らませ唸る陽毬だが、俺が本当に子どもを苦手だと知っているためか、やがて大きな溜息を零すとスカートを払って立ち上がった。
 その時、あの足音がピタリと止まった。どうやら公園の入り口で止まっているらしい。どうしたのかと少し気になってそちらを向いた。
 帽子を被り、顔は見えない。何かを探しているのだろうか、きょろきょろと辺りを見回している。そして俺たちを見つけると、ぴたりと動きを止めてタタタタと駆け寄ってきた。

「あの、すみません!」

 その声に、固まった。

「ここらへんでねこ見ませんでしたか?まっ白い、まだこねこなんですけど」

 このくらいの、と小さな手を動かし大きさを示している。だが、そんなことよりも、俺たちを見上げるその瞳だ。
 この瞳の色を、俺たちはよく知っている。
 そしてこの声も。

「あの」

 震える手をなんとか動かし、その少年の帽子を取る。「えっ?」という驚きの声は無視し、その顔を見て俺たちは声を失った。
 そこには、晶馬がいた。
 箱の中で共に励まし合い、運命の果実を分け与えた頃の幼い晶馬が。
 陽毬を選び、傷だらけになりながらも彼女を救った時の晶馬が。
 俺たちが、家族になった頃の晶馬が、そこに。

「………しょう、ま」

 自然と零れ出た声を彼はしっかり拾ったらしい。目を大きくして俺を見つめた。

「どうしてぼくの名前を知ってるの、あ、ちがう、知ってるん、ですか?」

 やっぱり。持っていた帽子がするりと手から落ちていく。
 この子は晶馬なのだ。他人の空似じゃない。この子は、こいつは、間違いなく、晶馬だ。
 高倉晶馬だ。
 俺たちの晶馬が帰ってきたのだ。

「……しょう、ちゃん?」
「え?あれ、どうして泣いてるの?ぼく、何かいけないこと……」
「………晶ちゃんだ。本物の、晶ちゃんだ」

 そう言って陽毬は膝をつくと、零れる涙を拭うことなく晶馬を抱きしめた。晶馬はそれに驚き、最初は抵抗していたものの、それを押さえ込むかのように力を込めるとやめた。そしてだんだんと陽毬が声を上げて泣きはじめると、困惑顔で俺を見た。
 そしてまた驚くのだ。

「な、なんでお兄さんも泣いてるの?」
「……なんでだと思う?」

 お前が帰ってきたからだよ。
 そう言っても、こいつはどうせ首を傾げるだろうけれど。

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