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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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女性
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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あけましておめでとうございます。
いつまで存在するか分からない我が家共々、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

ぶらこん!の続編です。あの後の話。
どっからどう見ても晶馬は可愛い。


「ああ、やっとどっかに行ったな」
「どっかじゃなくて家に帰ったんでしょ……」

 兄貴の友人は既に帰宅した。無理もない。僕が呼ばれてリビングに行った時の兄貴と言ったらそれはもう物凄く機嫌が悪かった。長い足を組み、カッカッと巷じゃ美しいと評判の指でソファの手すりを叩くその姿はまるでどこかの王様のようだ、と思ったのは数分前。今その王様はただの高倉冠葉となり、僕をソファに押し倒して抱きついたまま離れない。
 高い制服が皺になると文句を言って離れさせようとすれば、彼はすぐにブレザーを脱ぎ捨てた。絨毯の上にへなりと捨て置かれたままの制服を、ハンガーにかけたくて仕方ないのだが、少しでも動くと抱きしめる力が強まる。仕方なく、そっと腕を動かし、胸元にある彼の頭を優しく抱きしめた。こうすると大変喜ぶのだ。

「……お前はどうしてそんなに可愛いんだろうな」
「何度も言うけど僕は男だよ」
「だから何だ。可愛いものは可愛い。お前が俺の弟で晶馬である以上それは決定事項なんだ」
「ごめん、ちょっとよく分からないんだけど」

 真剣な面持ちで言われても、彼の言葉の意味が理解できず戸惑う。しかし兄貴は「いいんだ」と首を振って上体を起こすと、僕の腕を取って自分の方へと引き寄せた。
 そうしてまた、強く抱きしめられる。

「ああ……癒やされる。目に入れても痛くない、寧ろ永遠に入れていたい」
「兄貴、いい加減にしないと女の子から引かれるよ」
「いいさ。そんな女、こっちから願い下げだ」

 髪に唇を当て、音でキスをしているのが分かった。弟の髪にそんなことをしたって何も得られるものはないと思うのだが、兄貴はいつもこれをする。こんな姿を是非、兄貴が格好いいなどとハートを撒き散らす子たちに見せたいものだ。一瞬で石化するだろう。
 と、思って、そういえばそうなった場合、誰よりも僕が恥ずかしいということに気付き止めることにした。

「もう、止めろって!」
「嫌だ。あー、可愛い。晶馬、お前ジャンプー変えたか?」
「何言ってるんだよ!兄貴と同じだろ」
「兄貴じゃない、お兄ちゃんだ」

 そうしてすんすんとにおいをかぐ兄貴に溜息をこぼす。この言葉を付き合っている彼女たちに向けたらどれだけ喜ばれることか。どうして僕に言うのか分からない。だからといって陽毬にしたらただじゃおかないけれど。
 全く、同性だからといってなんの躊躇もなく甘えてくるし、甘やかしてくるし、本当にどうしようもない兄貴だ。
 平気で頬をすり寄せてくるし、泣けば涙を舐めてくるし、携帯を欠かさず持ち歩いてはすぐに写真や動画を撮ってくる。そのデータを全てパソコンに入れて、さらにディスクに保存しているのを言われた時には流石に引いた。母さんの「冠葉は本当に二人のことが大好きね」という天然じみた言葉がなかったら、あのまま家を飛び出していたかもしれない。
 母さんの言葉に、兄貴はこう言ったのだ。

「当然だろ。だって俺の、何よりも大切な弟と妹なんだから」

 その時の兄貴の顔を、僕は永遠に忘れないだろう。あの、幸せに満ちた笑顔を。

「兄貴」
「うん?」
「今日の夕飯、何だろうね」
「そうだな……俺はお前達の好物だったらいいと思う」
「何で」
「可愛い顔がさらに可愛くなるから」
「…………あっそ」

 兄貴の僕たちへの愛情表現は非常に激しい。
 周囲からブラコン・シスコンと呼ばれても平気で受け止める、自覚済みのブラザーコンプレックスであり、シスターコンプレックスだ。
 特に同性である僕に対しては何の躊躇いもなく、本能のままに動く。時にはとても腹が立つし、うざったく思うこともある。もしかしたらしょっちゅうかもしれない。
 けれどそれが兄なのだ。高倉冠葉という、ありのままの彼なのだ。
 だったら仕方が無いことだ、と結局最後は許してしまう。
 それが弟である僕の務めであり、僕なりの愛だ。

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