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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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女性
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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KISS ME!!の続編のようでちょっと違う。
冠葉と陽毬が晶馬に抱いてと強請る話。
表向きは陽毬が真ん中の高倉家なんだけど、実は晶馬が真ん中で。
二人は晶馬が大好きでたまらないんだけど、それを晶馬は分かってない。
二人と一人の想いが交差しないからこうなるって話。

 いつからか、兄貴が僕を抱きしめながら眠るようになった。陽毬の代わりか。本人に確認はしていないが、恐らくどちらもだろう。そう、一度でも思ってしまえばもう駄目だった。
 それ以来、僕は彼を抱きしめ返すのを止めた。代わりにその手を握ることで、胸の奥からじわじわとわき起こる切ない苦しみに耐える。
 そうしているうちに、やがて陽毬さえ抱きしめることが出来なくなってしまった。彼女が僕を抱きしめるのは、きっと人恋しさ故だろう。
 手は、最初のうちは動いていた。しかし、上まで持ち上がらないのだ。
 誰かの代わりなら、人恋しいなら、二人でやればいいのに。
 どうして僕に手を伸ばすのか。
 それを言葉にした事はないけれど、ぜひとも教えて欲しいものだ。

「晶ちゃん」
「ん?」

 お玉でぐるぐるとカレーを焦がさぬように温めていた。陽毬に後ろからぎゅっと抱きしめられたのは、結構前のこと。コンロに火をかけたときだった。それから彼女はずっと僕の後ろにへばりつき、ぐりぐりと頭を背中に押し付けてきたり、エプロンの紐をいじったりしていた。可愛い。僕の頭の中にあるだけの言葉では言い表せないくらいの可愛さだ。でもこの手を止めるわけにはいかないし、何より陽毬のその後ろ、居間には兄貴がいる。先ほどからじっとこちらを見つめているのは気配で分かっていた。どうせ羨ましいと思っているのだろう。そんな彼の視線を受けながら、何か出来るわけが無かった。
 今まで何も言ってこなかったのに、いきなりどうしたのだろう。カチリと火を止め、お玉から手を離した。首だけで振り返り、陽毬を見る。

「どうしたの?」
「抱いて」

 ガタッと居間の方から何かが落ちる音がした。しかしそれに言われた本人である僕が構っていられるわけがなく。

「え?」

 思わず「何て言ったの?」と聞き返してしまった。するともう一度、彼女は一言。

「抱いて」

 と、僕をじっと見つめた。冷静になれ、僕。

「ええと……とりあえず、ううんと、どういうこと?」
「だって晶ちゃん、全然私のこと抱きしめてくれないんだもん」

 ああ、そういうことか。いやいやそういうことかって僕。
 それにしても、まさか気付かれていたなんて。予想もしていなかった。

「いや、その、ね。陽毬も女の子なんだから」

 慌ててもっともらしい理由を取り繕うも、陽毬の瞳は僕を映したままだ。ぷうっと頬が膨れることも無い。
 これは本気で怒っている。
 しかし、どうしてこんなに怒るのか、考えても思いつかなかった。

「私は確かに女の子だけど、その前に私は晶ちゃんの妹だよ。だからそんなことどうでもいいの」
「どっ、どうでもいいって」
「もし私が女の子だからって言って晶ちゃんが避けるんだったら、私、女の子やめる」
「えええええ!?」

 お、女の子止めるって。どういうことだ。陽毬は女の子だからこそ可愛くて、いや、例え彼女が弟としてこの世に生まれていたって、それはそれでとても可愛かっただろうけど。弟として可愛がっただろうけど。でもそれはそれ、これはこれだ。
 冗談だよね、と言いたかったけれどそんな空気じゃない。本気だ。本気で陽毬はそう思っている。

「ひっ、陽毬?お兄ちゃん、そういう問題じゃないと思うなあ!」
「じゃあどういう問題なの?」
「そ、それはねえ、それは……」

 駄目だ。いい言葉が思いつかない。
 これはもう、兄貴に助けてもらうしかないな、と視線を彼へ移したところ、固まった。
 兄貴もまた、陽毬と似た瞳で僕を見つめていたからだ。

「あ、兄貴?」

 先ほどの動揺はどこへ消えた、と聞きたくなるくらいにしっかりとした足取りで僕たちの傍までやってくると、威圧感たっぷりの声と姿勢でこう言った。

「俺にもそうだよな」
「え」
「お前、同性で双子の兄である俺にも、同じ態度だよな」

 まさかの兄貴の参戦に、何故と思い切り叫びたくなった。

「そっ、それはこの年で兄弟が抱きしめあってたらおかしいからであって!」
「私、同性じゃないよ?同い年でもないし」
「いや、だからね陽毬。兄貴と陽毬は全然違うんだよ、えっとね」
「家の中じゃ誰も見てないのにか?」
「それはそうだけど気持ちの問題がさあ!」

 ああもう、何が何だか分からない。逃げたくても腰の辺りは陽毬の腕によって強く締められてしまって動けないし。せめて視界だけはと顔を動かそうとすると、今度は兄貴の両手によって頬を挟まれ固定されてしまった。
 逃げ場が、ない。

「あーあ。私たち、こんなに晶ちゃんのことが大好きなのに、晶ちゃんは私たちを抱きしめてもくれないなんて」
「本当、酷い奴だよ。そしてずるい奴だ」

 そう言うと、兄貴は僕の頬から背中へと手を移動させ、陽毬ごと僕を抱きしめた。
 二人に挟まれ、抱きしめられる。背中から陽毬が、前からは兄貴が。妹と兄によって、僕の体は温かい。
 けれど、どうしても。
 この腕で彼らを抱きとめることも、出来ないのだ。

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