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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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女性
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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前に書いたラブレスパロの続きです。
続きと言うか冠葉視点で、最後だけちょこっと続き。
をんさんがこの間を素敵に可愛く色っぽく描いてくださっていますので、リンクからをんさんのサイトへ是非!

またぶち切ったで終わった。


 誰と寝て耳が無くなったかなんて覚えていない。いつなのかさえも、全く。ただ覚えているのは帰宅した俺を迎えた晶馬の瞳が大きく見開き、ぽろぽろと涙を零したこと。そして、その泣き顔が酷く俺の心を高揚させたことだけだ。別に晶馬の泣き顔が見たいわけじゃない。嫌いと言うわけでもないが、どちらかと言えば笑顔が好きだ。ただ、俺とは違って独占欲をなかなか表に出さない晶馬が、俺の頭を見て泣くほど悲しんだのが嬉しかった。

「どう、して」

 夕飯の支度をしていたのだろう。晶馬は着けていたエプロンを握り締め、嗚咽交じりにそう言った。
 どうして、と尋ねられても返答の仕様がない。理由なんてなかったからだ。ただアレが抱いてほしいといったから抱いて、そしたら耳と尻尾が取れていた。それだけのこと。
 ああ、でも。今思えば。
 晶馬に嫉妬してほしかったから、かもしれない。
 その理由はあっけなく、すとんと胸の中に収まった。今更になって気付くとは。晶馬にいつも鈍い鈍いと言っているのに、これじゃあいつのことをどうこう言えない。
 そう、つまりはそういうことだったのだ。
 晶馬は俺を置いてあちこちに行ってしまう。あいつは俺がそうだと思っているようだが、俺なんかまだかわいいほうだ。晶馬はそれを無自覚の上で行っているのだから、俺なんかより倍に性質が悪い。
 学校へ行けば山下に容易く抱きつかれ、嫌がる素振りすら見せず受け入れている。学校から出れば荻野目のストーカーの手伝いをしながら買い物をしたりしているようだ。その繋がりで、多蕗にはよく声をかけられ笑顔で答えている。その婚約者であり奴の戦闘機でもある時籠にも気に入られたようで、よくメールのやり取りをしているらしい。それだけじゃない。陽毬の入院先の病院で、渡瀬というサクリファイスの中では有名な人物に出会ってしまった。それ以来、休日になると彼の空き時間に、なにやら指導を受けているという。どうやら晶馬は俺に遅れをとっていると思い込んでいるようだ。

「冠葉の戦闘機として誇れるようになりたいんです、だって。素敵な兄弟愛じゃないか。シビれるだろう?」

 こっそりと渡瀬から聞いた晶馬の想いに、思わず舌打ちをした。
 そんなこと、誰も思ってやいないのだ。
 確かに、戦う前は晶馬を馬鹿にする奴らがいる。だが、いざ戦って相手が敗北した後、奴らが一体どんな目で晶馬を見ているのか、あいつは知らない。元々鈍いが、自分に向けられる思いにはそれ以上に鈍くなる。
 誰かは晶馬を戦場のマリアと讃え、誰かはジャンヌ・ダルクの再来と評し、その身のこなしと美しさに酔いしれる。晶馬が男であると分かっていても、そう思い込んでしまうほどにあいつの戦いはまるで舞っているのかと思わせるほど美しいのだ。
 高倉冠葉の美しく愛おしい唯一無二の戦闘機。それが高倉晶馬だ。
 そんな俺の晶馬を汚すような行為は絶対に許さない。いつしかそんな気持ちが芽生えていた。例えそれが俺自身であっても、だ。
 だから、こうなるまで晶馬の気持ちに気付いてやれなかった。
 気付かなかった。

「……あいつの元へ行くのなら」

 組み伏せた晶馬と、その後ろに見える奴を睨みつけて言う。

「俺がお前を汚してやるよ」

 ゆらりと揺れた瞳をべろりと舐めて、空いた片手で晶馬のシャツのボタンをぶち切った。

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