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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
プロフィール
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うめ
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性別:
女性
自己紹介:
どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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以前TLで話題になった?晶馬無痛症の話。
人によりますが、無痛症は痛みだけでなく冷たさや熱さも分からないとか。
不快な方はスルーでお願いします。
カプ要素は薄く、仄暗さしかない。

 冬。誰しもが冷たい水に触りたくは無いだろう。だが、料理をするには絶対にしなくてはいけない。全国の主婦がこの時期を苦痛に思うだろう。
 そんな中、主夫と呼ばれる晶馬はじゃぶじゃぶと皿を洗っていた。桶の中に水を張り、手を入れて中の皿を持ち上げ、洗剤のついたスポンジで洗う。
 彼の兄と妹はまだ眠っている。彼らを起こさないよう静かに洗うために、水を細く出し時間をかけて洗っていた。
 平然と、少しも辛そうな顔をせず。
 すると、後ろから手が伸びてきて、蛇口を捻った。振り向けば、冠葉がむすっとした顔で晶馬を見つめている。一体どうしたのかとぼーっと見ていると、ザーッという音がして湯気が見えた。ふと桶の方を見ると、蛇口からではなく電気給湯器から水が出て来ていた。どうやら冠葉がスイッチを押したらしい。

「何でこっちを使わないんだ」
「だって電気代もかかるし……音も響くから」
「だからって、お前の体が壊れたら元も子もないだろ!」

 晶馬の手から皿とスポンジを取り上げ、両手を掴み湯につける。ザーザーと流れるそれを、晶馬は黙って見ていた。
 今の冠葉の声で起きてしまったらしい。ぺたぺたと後ろから足音が聞こえてきた。

「……二人とも、どうしたの?」
「あ、起こしちゃった。ほら、兄貴、陽毬起きちゃったよ」
「……ごめんな陽毬」
「ううん、いいの、大丈夫。でも、」

 何をしているのか、と続けようとしたのだが、はっとして眼を擦っていた手を止めた。晶馬の両手を湯につけている冠葉、隣に濡れている食器。それらを見て全てを理解した陽毬は、急いで居間に敷いてある蒲団の毛布を取って、晶馬の後ろから肩にかけた。

「晶ちゃん、あったかくしなきゃ駄目だよ!」
「……えっと」
「大丈夫じゃないからね!ほら、ほっぺもこんなに冷たい!」

 背伸びをした陽毬の手がぴたっと晶馬の頬に触れる。温めるように擦る陽毬に、晶馬は困ったように笑った。

「じゃあ、陽毬の手がつめたくなっちゃうじゃないか」
「そんなことない、大丈夫だよ!」
「……兄貴」
「俺は今手が離せないから陽毬、頼んだぞ」
「もちろん!」
「…………二人とも」

 二人の優しさが温かい。それだけで晶馬は充分なのに、彼らは晶馬の体まで温めようとしてくれている。
 嬉しい、とても嬉しい。
 だけど、と晶馬は目を伏せて呟く。

「ごめん、ね」

 その温かさを感じることが出来なくて。

 晶馬の声が聞こえた冠葉は彼の手を強く握り、陽毬はとん、と彼の背中に額を押し付けた。

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