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晶馬受中心に、掌小説にすらならない指先小説やネタを放置する場所。
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うめ
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女性
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どうしようもない場所から来た何者にもなれない存在。晶馬くんが幸せならいいな!とか言いながら他の人の手を借りて彼を泣かしたりボコったりしている。支部でもちょこちょこ書いてます。呟きは@umeeee02
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誰が犯人だか分かるかい?

結構前についったで呟いていたアレです。
最初は陽毬も巻き込もうと思っていましたがやめました。最近そればっかだったから。

 最近だれかに見られている。
 学校にいる時も買い物をしている時も、何をしていても見られている。
 誰にかは分からない。そちらの方を見ても誰もいないし、勇気を振り絞って声を上げても返ってこない。怖くて怖くて、外出することが嫌だった。けれど行かないと学費が勿体無いし、食材も得られない。だから頑張って、嫌がる体を引きずり外へ出る。そして、帰ってきてから吐く。
 これならまだその知らない誰かに直接触られた方がマシだ。以前、満員電車の中で痴漢にあったことがある。その時も気持ち悪くて近くにいた兄貴がそいつから離してくれなければ、もう二度と電車に乗れなかっただろう。
 けれど、その時より今のほうがきつい。誰に見られているのか分からない恐怖、どこを見られているのか、服をすり抜け、その中の中まで見られているような気さえしてしまって。
 誰かに相談しようとはした。だが、果たして信じてもらえるだろうか。きっと気のせいだと言われて終わるに決まっている。家族である兄貴や陽毬にも無理だ。あの家は安息の場所でなければならない。そんな場所にこんなことを持ち込めない。幸いなことに、家の中ではその視線は感じなかった。家って凄いんだな。改めて実感した。
 だからこそ、言えなかった。

「……晶馬?」

 その声で我に返る。振り向けば心配そうにこちらを見つめる兄貴と陽毬の姿があった。
 ぎゅっと三号を抱きしめている陽毬。その視線の先を追えば、ぶくぶくと泡が吹き零れている鍋が。

「あ!」

 危ない、と慌てて火を止めた。蓋を開けて中身を確認すれば、ギリギリ大丈夫だったようで安心する。食材が無駄になるところだった。

「晶ちゃん」
「ごっ、ごめんね!ちょっとぼーっとしちゃって、今すぐご飯作るからね!」

 そういえば夕飯を作ってる最中だったのだ。忘れていた。
 急いで作らなくては。サラダを作ろうと、洗ってあったきゅうりに手を伸ばすと、その手を兄貴に握られた。見上げれば、眉を顰めて険しい顔をした兄貴が僕を睨んでいた。

「お前、最近変だぞ?何かあったのか?」

 びくり、と反応してしまう。すぐに取り繕って「なんでもない」と彼の腕を払ったのだが、今度は反対側の腕を陽毬に握られてしまった。

「なんでもなくないよ。最近、晶ちゃん何かに怯えてるもん。この前だって一緒に買い物してた時、後ろを何回も見て……ねえ、心配だよ」
「学校でだってそうだろ。山下が後ろから抱きついたらかなり驚いて。一体何があった?」

 言えるわけがない。
 この家は安らぎの場所で、誰にも縛られず自由でいれるところなんだ。
言ってしまえば二人はきっと心配して、不安になる。そんなの嫌だ。どんな形であれ、二人を不安にはさせたくない。

「……大丈夫、だから」

 僕の腕を掴む陽毬の手をそっと外し、「顔を洗ってくる」と二人の視線から逃れるように風呂場へ向かう。
 そんな僕を見つめながら、兄貴が一人笑っていたなんて、誰が予想しただろう。

「……あと少し、か」

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